(▼2024/2/10更新)
(▼2020/7/25追記)
水濡れした写真の応急処置について。
写真は水に濡れても大丈夫です。
まずは
「捨てない」「乾かす」
このことが一番大切です。
「濡れたまま保管はNG」です。
スマホでよいので
以下、処置法は実践する際にご参照ください。
(▼2015/9/23追記)
『水に濡れた写真の応急処置』チラシです。写真洗浄・返却活動に携わった各地の有志で作りました。掲示・配布・配信自由です。PDFはコンビニのコピー機で「文書プリント」が可能です。USBメモリに入れてお持ち込みください。そのまま印刷入稿することもできます。
モノクロ版 PDF ▶ https://bit.ly/3UU3s2v
コピー機や簡易印刷機で刷って各所へ配ってください。
カラー版 PDF ▶ https://bit.ly/4bBMyLG
こちらは引き伸ばしてポスターに。
画像は配信用にお使いください。
(▼2015/9/14記)
被災地や活動場でこれまで実践したことの一部です。写真を保護するにあたって必要なことがあれば参考にしてください。写真の状態に応じて処置していただければと思います。
アルバムの乾燥
フエルアルバム/ポケットアルバムなど
水没した写真アルバムは、早期に水から引き上げることが必要です。そして早期に乾燥させること。写真の表面は「ゼラチン」と呼ばれる有機物でできています。泥水には多くのバクテリアが含まれ、濡れたままにしておくと短期間でゼラチン質が分解され写真像が消えてしまいます。できるだけアルバムが乾きやすい状態にしてください。
アルバムを立てて開くとページ内がよく乾きます。扇型にページを開き、中が空気に触れる状態にしておきます。洗濯ばさみがあればページを留めておけます。新聞紙など吸水性のあるものが近くにあれば利用してもよいです。泥をできるかぎり払っておくことも大切です。
-----------------------------------------
額入り写真
額入りの写真はなるべく早めに額から出して乾燥させてください。ガラスに張り付いて取れなくなる場合があります。早期の取り出しが大切です。もしも貼り付いてしまった場合は無理に剥がさないほうがよいです。写真像が剥がれてしまうことがあるためです。そのまま乾いてしまった場合は、ほぼ外れません。諦めて現状でできるだけ綺麗に洗い、データを撮りましょう。額に入れている写真は大切な写真が多いのではないかと思います。慎重に対処していただけましたらと思います。剥がす前にもデータを撮っておくことをお薦めします。
台紙付き写真
泥が中まで入っていたら解体して中の泥を落としてください。ハケがあると便利です(ハブラシでも)。台紙のクリーニングは消しゴムも役立ちます。ガムテープで汚れた面を剥がす、他の厚紙に換えるなども有効です。全体にカビが蔓延していたら台紙は諦めるほうがよいでしょう。その際は写真だけ保護して別のアルバムへ移し替えます。替えの台紙は数百円〜千円くらいで売っています(amazon.co.jp 写真台紙)。写真のサイズはこちらご参照ください(用紙サイズ一覧.com)。
ビニール袋や土嚢袋に入れっぱなしにすると、カビやバクテリアが繁殖しやすくなります。運搬のために一時的に袋へ入れることはあると思いますが、保管時は必ず袋から出してください。そのまま放置すると写真像が消失してしまいます。湿気が籠もらないようにしてください。
写真を乾かす要領は下記動画もご参照ください。
水や泥に濡れた写真の応急処置(乾燥)
被災写真救済ネットワーク YouTubeより
©三陸アーカイブ減災センター
https://youtu.be/kHUi2htkBI8
-----------------------------------------
ボランティアで現場に入る方へ
断水や避難生活が続く中で水を使った写真洗浄をすることは難しいと思います。すぐに洗浄できない場合は乾燥させることを推奨してください。洗浄は後で落ち着いてからやるということでよいです。そのためは諦めず捨てないで取っておく。よろしくお願いいたします。
災害直後は心身ともに疲弊している方が多く、全てを処分してしまいたいという思いにかられる方も多いです。後になってから写真を捨てたことを後悔している方がたくさん居られます。支援に入られる方にできれば「これは捨てないで取っておきましょう!」の一声をお願いしたいと思います。そして乾かすこと・洗えることを伝えてください。ボランティアさんに教えてもらって写真が救えたという方がたくさん居られます。ぜひお願いします。ボラセンのオリエンテーションでもご伝達をお願いできればと思います。そして可能であれば現場で仮処置(乾燥)してくださると救える可能性も上がります。処置はアルバムを広げて立てておくだけでOKです。洗濯ばさみがなければ広げるだけで良いです。1冊5分程度あればできます。皆さまの善意で大切なお写真が救えます。よろしくお願いいたします。
-----------------------------------------
データによる保護
すぐ処置できない場合は、写真の写真を撮っておくとよいです。最悪写真がだめになってしまっても、写真像を残せます。データで撮っておけば、後からプリントすることもできます。
処分を検討している方がおられましたら、まずは写真撮影を。それほど時間も掛かりません。捨ててしまってから後悔する方がたくさんおられます。
カメラはスマートフォンのカメラでも十分です。最近のスマホは解像度も高く、色補正・露出調整・トリミングの機能が付いています。撮るときは光の反射に気をつけます。多少暗いくらいの方が上手くいくことが多いです。よりよい画質を求めるならば一眼レフカメラが良いと思います。フラットベットスキャナーを使う方策もあります。データを撮る際はできるだけ泥を払ってからがよいです。その余裕がないときは、ただ撮るだけでも。大切な写真だけ撮るということでもよいと思います。
スマートフォンのスキャンアプリは現在では様々な種類があります。無料で利用できるものも多いです。自動でトリミングしてくれます。当方では記録用に下記を使用していました。
Googleフォトスキャン iOS android
有料ですがOmoidoriという優れたスマホスキャナーもあります。光の反射を取り除いてくれて、トリミング・色補正を自動でしてくれます。iPhone限定になりますが利用価値は高いです。
PFU Omoidori http://omoidori.jp/
-----------------------------------------
アルバムの一時保護について
流出した写真アルバム、拾得した写真アルバムを一時保護する場合は、なるべく雨水に濡れない状態で保護してください。可能であれば屋根のある場所。屋外であれば覆いを被せていただけるとより確実に保護できると思います。雨水が溜まりやすいプラケースなどを避け、排水性のよい容器に入れていただけると二次的な水没も避けられます。また風に飛ばされないようにしておくことも大切です。泥を払い、立て掛けておくと水分が滞留せず写真の劣化も最小限に抑えられます。やむを得ず現場に残す場合は伝言を記すとよいです。
持ち主の方が判る場合は直接お渡しするのが一番よいと思います。持ち主不明の場合は指定された集約場所へ持ち寄ります。後から持ち主の方に引き取られることになります。どこで拾ったのか、誰が写っているかを伝えることが返却に繋がる手掛かりになってきます。正確な場所、状況をお伝えください。しかし泥出しや家財の片付けを行っている段階では、不用意に移動させると返却が遠のいてしまう場合もあります。まずは近くに居る方々に心当たりはないか聞いてみる必要があると思います。
-----------------------------------------
写真の洗浄
水洗い
水に濡れた銀塩写真の多くは水洗いすることができます。現像自体に水が使われるため、印画紙は比較的水に強い素材でできています。
必要なものは、水、バケツ、吸水用のタオルなどです。バケツに水を張り、写真を水に浸して少しずつ汚れを落としてゆきます。大抵の写真はこれで綺麗になります。
表面が腐食している場合は絵柄が落ちてしまう場合があるので慎重に洗浄します。写真の端の方から少しずつ。大切な絵柄を守りながらゆっくり洗ってゆきます。ぬるぬるした感覚が少しあると思いますが、ゼラチン質が溶け出しているためで、全てを落とそうとすると絵柄がどんどんなくなってゆきます。汚れた部分だけを落とす要領で、守る部分を見極めながら、写真をよく見て洗ってください。デリケートな部分は絵筆を使うとより微細に洗えます。
泥汚れが落ちたら清水ですすぎをします。蛇口の水を直接当てると写真像が崩れてしまうことがあるので直接当てない方がよいです。別の容器に水を張り、水中を泳がせるような形ですすぐと良いと思います。すすぎは軽くすすぐ程度で十分です。その後は水をよく切り写真を乾かします。水切りはネコ避け・カラス避けのようなものがあると便利です。100円ショップで売ってます。
乾かすときは、写真を重ねず1枚1枚に空気が当たるようにします。
新聞紙の上に並べておくだけでも乾きます。屋外であれば洗濯物干しに干しておくのがよいと思います。物干しに干す場合は写真に洗濯ばさみの跡が付く場合があるので、なるべく写真の端を挟むようにしておきます。
-----------------------------------------
部分洗い/水拭き/乾拭き
浸食が深く進行した写真は、水洗いしないほうがよい場合が多いです。像が剥がれて真っ白になってしまうことがあります。心配な時は写真のフチを少し試してから行うとよいでしょう。部分洗いも有効です。水には全部浸けずに水面で少しずつ浸して洗う感じです。人物などの被写体はしっかり残し、溶け出したフチの部分だけ洗っていくと、大切な写真を白くせず守ることができるでしょう。大抵の写真は端から水が浸透するので、端の方が劣化しています。バクテリアに侵されたところはできるだけ洗い落としたほうがよいのですが、多少汚れが残っていても大きく問題があるわけではないです。どこまで洗うかは一概に決められません。背景も写真の一部ですので、写真像を見ながら判断をおこなってください。
水洗いが困難な場合はウェットティッシュで水拭きをする方法もあります。慎重に写真の端の方からゆっくり汚れを落としていきます。綿棒を利用すると人物の周辺なども精細にクリーニングすることができます。損傷部分に指紋が付くのでゴム製の手袋をして作業すると良いと思います。インク滲みの汚れはエタノールがあると簡単に落とすことができます。
損傷が大きい写真は洗浄を諦めることも選択のひとつになってきます。その場合はカメラで撮影してデータを残しておきます。データがあれば後からプリントすることもできます。
-----------------------------------------
その他の注意すべき写真
インクジェット/ポラロイド/ラミネートパウチなどは水洗いに不向きです。インクジェットは水濡れで変色し、ポラロイド類は破損箇所より水が入り、内側にカビが生える場合もあります。水洗いする場合はさっと洗ってすぐ水気を切ってください。できれば拭いて落とすのがよいでしょう。
白黒写真はコーティングがないものが多くデリケートです。カラー写真よりも注意が必要です。損傷が大きい場合は水洗いできません。乾拭きで泥やカビを落とす程度に留めてください。
ひび割れていたり粉を吹いている写真は極力いじらない方がよいです。データ撮影をお薦めします。
-----------------------------------------
アルバムの解体
アルバムを解体し写真を取り出す
濡れた写真をアルバムに入れたままにしておくと、カビやバクテリアの増殖が進むことがあります。乾いたものでも一度水濡れしたアルバムはできれば解体し、写真を取り出すほうがよいと思います。
下記を参照していただましたらと思います。より慎重に写真を守るために一旦カバーフィルムごと外していくというのがポイントです。台紙から写真を剥がす際はカッターナイフを写真と台紙の間に滑り込ませ、こじ開けるような形で外すと外れやすいです。その場合は写真を切らないように注意してください。また怪我しないように細心の注意を払いましょう。
フエルアルバム(接着タイプ)の場合
カッターで写真周囲に切り込みを入れ、カバーフィルムごと写真を取り出します。いきなりカバーを剥がすと、写真の像まで一緒に剥がれてしまうことがあります。カバーごと一旦アルバムから外し、その後に1枚1枚を取り出す要領です。切り込みを入れる際は裏側の写真を切ってしまわないように気をつけます。
ポケットアルバムの場合
ポケットアルバムはカバーの蝶番を外すと簡単に解体することができます。この場合も同様に、写真を引き抜かず、カバーごと写真を外し、その後に写真を取り出します。
裏面に接着糊が付いている場合は先に取り除いておきます。ナイロンたわしなどで擦ると糊を落とすことができます。カバーフィルムを剥がす際は、劣化の少ない側から剥がすとよいと思います。人が写っている場合は顔とは反対の方向など、影響の少ない方角から剥がしてゆきます。人物に劣化が掛かっている場合は慎重に。場合により剥がすことを断念する必要も出てきます。
-----------------------------------------
フイルムの処置
水に濡れたフイルムは、裏側の乳剤の塗ってある部分が浸食され、画が消えてゆきます。樹脂製のスリーブに入っていますので、水が抜けず、とりわけ面積が狭いので浸食が早く進みます。できるだけ早くスリーブから出し乾かすことが大切です。引き抜けなくなっているので、ハサミやカッターでスリーブを切ってフイルムを出し、そして乾かします。ある程度乾いたら軽く水で洗い溶けた部分を拭います。デリケートなので洗わない方がよい場合も多いです。その場合はウェットティッシュや綿棒などで汚れを拭います。やりすぎると画がどんどん消えてゆきます。ある程度で止めておく方がよいです。フイルムそのものよりも写真像とデータを残すことを念頭に。消えてしまったコマは諦め、画が残っているコマを救い出します。多少ベタ付きが残っていても構わないと思います。洗浄後のフィルムはよく乾かし、紙に巻き保管します。クッキングシートがあれば貼り付かなくてとてもよいです。樹脂製のフィルムスリーブに入れると貼り付いて抜けなくなる場合もあります。処置法はネガ・ポジともに変わりません。
救出できたフイルムはフィルムスキャナーでデータ化します。被災フイルムを写真屋さんへ持ち込んでも現像を断られる場合がほとんどです。像を残すにはデータ化が一番良いと思います。洗浄もそれを念頭に洗います。多少ベタベタが残っていても、データとして残ればフイルム内の写真像は救うことができます。
フイルムスキャナーには様々な種類があり、CMOSタイプのスキャナーは1万円以下で購入できるものもあります。概ね8,000円〜20,000円くらい。高性能のCCDタイプはもう少し高額です。フラットベットスキャナーにフィルムスキャン機能が付いているものもあります。購入は落ち着いてからということで良いと思います。
amazonフィルムスキャナー
-----------------------------------------
卒業アルバム等 印刷物の保護
水濡れした卒業アルバムなど。印刷物は貼り付きやすいのでより注意が必要です。ページが貼り付く前に処置する必要があります。
塗工紙(コート紙/アート紙)に印刷されたものについて。下記東京都立図書館さんの動画に詳しく処置法が紹介されます。濡れた状態を保つこと。乾くとくっついてしまうことなど。写真の初期処置と真逆なことも多いです。貼り付かないように濡れたまま時間稼ぎすることなど。詳細に対処法が紹介されますのでご覧ください。
被災・水濡れ資料の救済マニュアル
東京都・東京都立中央図書館さん YouTubeより ©東京都
ご家庭内でできることに絞ると吸水紙による乾燥が良い対処法だと思います。長いこと濡れているとカビが生えてきますし、そのまま乾かすとページが貼り付いてしまいます。早期に対処する必要があります。すぐ対処できない場合は、冷凍や脱酸素の処置が必要になってきます。紙を挟んで吸水乾燥させてください。過去の経験では、多くの卒業アルバムがカビてしまい、なお貼り付いてしまいました。
ある程度乾いた後で圧力を加えるとゴワゴワになることも防げます。板に挟んで漬け物石など乗せておきます。動画の13分以降を参照してください。
一般書籍の場合(小説本など)は以下も参考にしてみてください。
水にぬれた資料を乾燥させる
http://ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation/manual_drying.html
国立国会図書館さんより
-----------------------------------------
写真がくっついてしまった場合
重ねて保存していた写真がそのまま乾くと、写真同士がくっついてしまうことがあります。そのような写真でも大方剥がすことはできます。
浸食が軽い場合は、固まりを水に浸けて端から少しずつ剥がしてゆきます。可能であればお湯を加えてぬるま湯にしてください。ゼラチン質が軟化してよりはがれ易くなります。数枚の固まりごと隙間に水を入れていくような要領で少しずつ分離します。ある程度剥がしたら、さらに1枚1枚を分離します。端の方だけ強くくっつき、真ん中の写真像は無事ということも多いです。やってみてください。
浸食が重い場合は、水に浸けることは避けたほうがよいです。表の絵柄が落ちてしまうためです。水には浸けず剥がしやすい箇所を基点に注意深く剥がしていきます。なかなか簡単には剥がれないと思います。ペインティングナイフで介助を入れたりしながら少しずつ剥がします。状態によっては多少の損壊も伴ってきます。それでも剥がすべきかはよく考えながら行ってください。間に水滴を垂らすと多少は剥がれやすくなります。ティッシュに水を含ませポタポタ落とす感じです。カイロで少し温めるとゼラチン質が軟化します。剥がれにくい場合は試してみてください。
-----------------------------------------
記した以外にも方策は沢山あります。ここでは主に初期段階の応急処置に限定してまとめました。ご家庭でもできることに絞っています。被災された皆様の写真を救うにあたり、役立つ部分があれば参考にしてください。有用な部分があれば実践してみてください。
(課外のあらいぐま 一同)
(▼2020/7/25追記)
水濡れした写真の応急処置について。
写真は水に濡れても大丈夫です。
まずは
「捨てない」「乾かす」
このことが一番大切です。
「濡れたまま保管はNG」です。
スマホでよいので
「写真の写真を撮っておく」
すぐ処置できない場合はやっておきましょう。
写真は「洗う」ことができます。
余裕ができたら写真を洗いましょう。以下、処置法は実践する際にご参照ください。
(▼2015/9/23追記)
『水に濡れた写真の応急処置』チラシです。写真洗浄・返却活動に携わった各地の有志で作りました。掲示・配布・配信自由です。PDFはコンビニのコピー機で「文書プリント」が可能です。USBメモリに入れてお持ち込みください。そのまま印刷入稿することもできます。
モノクロ版 PDF ▶ https://bit.ly/3UU3s2v
コピー機や簡易印刷機で刷って各所へ配ってください。
カラー版 PDF ▶ https://bit.ly/4bBMyLG
こちらは引き伸ばしてポスターに。
画像は配信用にお使いください。
(▼2015/9/14記)
被災地や活動場でこれまで実践したことの一部です。写真を保護するにあたって必要なことがあれば参考にしてください。写真の状態に応じて処置していただければと思います。
アルバムの乾燥
フエルアルバム/ポケットアルバムなど
水没した写真アルバムは、早期に水から引き上げることが必要です。そして早期に乾燥させること。写真の表面は「ゼラチン」と呼ばれる有機物でできています。泥水には多くのバクテリアが含まれ、濡れたままにしておくと短期間でゼラチン質が分解され写真像が消えてしまいます。できるだけアルバムが乾きやすい状態にしてください。
アルバムを立てて開くとページ内がよく乾きます。扇型にページを開き、中が空気に触れる状態にしておきます。洗濯ばさみがあればページを留めておけます。新聞紙など吸水性のあるものが近くにあれば利用してもよいです。泥をできるかぎり払っておくことも大切です。
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額入り写真
額入りの写真はなるべく早めに額から出して乾燥させてください。ガラスに張り付いて取れなくなる場合があります。早期の取り出しが大切です。もしも貼り付いてしまった場合は無理に剥がさないほうがよいです。写真像が剥がれてしまうことがあるためです。そのまま乾いてしまった場合は、ほぼ外れません。諦めて現状でできるだけ綺麗に洗い、データを撮りましょう。額に入れている写真は大切な写真が多いのではないかと思います。慎重に対処していただけましたらと思います。剥がす前にもデータを撮っておくことをお薦めします。
台紙付き写真
泥が中まで入っていたら解体して中の泥を落としてください。ハケがあると便利です(ハブラシでも)。台紙のクリーニングは消しゴムも役立ちます。ガムテープで汚れた面を剥がす、他の厚紙に換えるなども有効です。全体にカビが蔓延していたら台紙は諦めるほうがよいでしょう。その際は写真だけ保護して別のアルバムへ移し替えます。替えの台紙は数百円〜千円くらいで売っています(amazon.co.jp 写真台紙)。写真のサイズはこちらご参照ください(用紙サイズ一覧.com)。
ビニール袋や土嚢袋に入れっぱなしにすると、カビやバクテリアが繁殖しやすくなります。運搬のために一時的に袋へ入れることはあると思いますが、保管時は必ず袋から出してください。そのまま放置すると写真像が消失してしまいます。湿気が籠もらないようにしてください。
写真を乾かす要領は下記動画もご参照ください。
水や泥に濡れた写真の応急処置(乾燥)
被災写真救済ネットワーク YouTubeより
©三陸アーカイブ減災センター
https://youtu.be/kHUi2htkBI8
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ボランティアで現場に入る方へ
断水や避難生活が続く中で水を使った写真洗浄をすることは難しいと思います。すぐに洗浄できない場合は乾燥させることを推奨してください。洗浄は後で落ち着いてからやるということでよいです。そのためは諦めず捨てないで取っておく。よろしくお願いいたします。
災害直後は心身ともに疲弊している方が多く、全てを処分してしまいたいという思いにかられる方も多いです。後になってから写真を捨てたことを後悔している方がたくさん居られます。支援に入られる方にできれば「これは捨てないで取っておきましょう!」の一声をお願いしたいと思います。そして乾かすこと・洗えることを伝えてください。ボランティアさんに教えてもらって写真が救えたという方がたくさん居られます。ぜひお願いします。ボラセンのオリエンテーションでもご伝達をお願いできればと思います。そして可能であれば現場で仮処置(乾燥)してくださると救える可能性も上がります。処置はアルバムを広げて立てておくだけでOKです。洗濯ばさみがなければ広げるだけで良いです。1冊5分程度あればできます。皆さまの善意で大切なお写真が救えます。よろしくお願いいたします。
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データによる保護
すぐ処置できない場合は、写真の写真を撮っておくとよいです。最悪写真がだめになってしまっても、写真像を残せます。データで撮っておけば、後からプリントすることもできます。
処分を検討している方がおられましたら、まずは写真撮影を。それほど時間も掛かりません。捨ててしまってから後悔する方がたくさんおられます。
カメラはスマートフォンのカメラでも十分です。最近のスマホは解像度も高く、色補正・露出調整・トリミングの機能が付いています。撮るときは光の反射に気をつけます。多少暗いくらいの方が上手くいくことが多いです。よりよい画質を求めるならば一眼レフカメラが良いと思います。フラットベットスキャナーを使う方策もあります。データを撮る際はできるだけ泥を払ってからがよいです。その余裕がないときは、ただ撮るだけでも。大切な写真だけ撮るということでもよいと思います。
スマートフォンのスキャンアプリは現在では様々な種類があります。無料で利用できるものも多いです。自動でトリミングしてくれます。当方では記録用に下記を使用していました。
Googleフォトスキャン iOS android
有料ですがOmoidoriという優れたスマホスキャナーもあります。光の反射を取り除いてくれて、トリミング・色補正を自動でしてくれます。iPhone限定になりますが利用価値は高いです。
PFU Omoidori http://omoidori.jp/
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アルバムの一時保護について
流出した写真アルバム、拾得した写真アルバムを一時保護する場合は、なるべく雨水に濡れない状態で保護してください。可能であれば屋根のある場所。屋外であれば覆いを被せていただけるとより確実に保護できると思います。雨水が溜まりやすいプラケースなどを避け、排水性のよい容器に入れていただけると二次的な水没も避けられます。また風に飛ばされないようにしておくことも大切です。泥を払い、立て掛けておくと水分が滞留せず写真の劣化も最小限に抑えられます。やむを得ず現場に残す場合は伝言を記すとよいです。
持ち主の方が判る場合は直接お渡しするのが一番よいと思います。持ち主不明の場合は指定された集約場所へ持ち寄ります。後から持ち主の方に引き取られることになります。どこで拾ったのか、誰が写っているかを伝えることが返却に繋がる手掛かりになってきます。正確な場所、状況をお伝えください。しかし泥出しや家財の片付けを行っている段階では、不用意に移動させると返却が遠のいてしまう場合もあります。まずは近くに居る方々に心当たりはないか聞いてみる必要があると思います。
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写真の洗浄
水洗い
水に濡れた銀塩写真の多くは水洗いすることができます。現像自体に水が使われるため、印画紙は比較的水に強い素材でできています。
必要なものは、水、バケツ、吸水用のタオルなどです。バケツに水を張り、写真を水に浸して少しずつ汚れを落としてゆきます。大抵の写真はこれで綺麗になります。
表面が腐食している場合は絵柄が落ちてしまう場合があるので慎重に洗浄します。写真の端の方から少しずつ。大切な絵柄を守りながらゆっくり洗ってゆきます。ぬるぬるした感覚が少しあると思いますが、ゼラチン質が溶け出しているためで、全てを落とそうとすると絵柄がどんどんなくなってゆきます。汚れた部分だけを落とす要領で、守る部分を見極めながら、写真をよく見て洗ってください。デリケートな部分は絵筆を使うとより微細に洗えます。
泥汚れが落ちたら清水ですすぎをします。蛇口の水を直接当てると写真像が崩れてしまうことがあるので直接当てない方がよいです。別の容器に水を張り、水中を泳がせるような形ですすぐと良いと思います。すすぎは軽くすすぐ程度で十分です。その後は水をよく切り写真を乾かします。水切りはネコ避け・カラス避けのようなものがあると便利です。100円ショップで売ってます。
乾かすときは、写真を重ねず1枚1枚に空気が当たるようにします。
新聞紙の上に並べておくだけでも乾きます。屋外であれば洗濯物干しに干しておくのがよいと思います。物干しに干す場合は写真に洗濯ばさみの跡が付く場合があるので、なるべく写真の端を挟むようにしておきます。
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部分洗い/水拭き/乾拭き
浸食が深く進行した写真は、水洗いしないほうがよい場合が多いです。像が剥がれて真っ白になってしまうことがあります。心配な時は写真のフチを少し試してから行うとよいでしょう。部分洗いも有効です。水には全部浸けずに水面で少しずつ浸して洗う感じです。人物などの被写体はしっかり残し、溶け出したフチの部分だけ洗っていくと、大切な写真を白くせず守ることができるでしょう。大抵の写真は端から水が浸透するので、端の方が劣化しています。バクテリアに侵されたところはできるだけ洗い落としたほうがよいのですが、多少汚れが残っていても大きく問題があるわけではないです。どこまで洗うかは一概に決められません。背景も写真の一部ですので、写真像を見ながら判断をおこなってください。
水洗いが困難な場合はウェットティッシュで水拭きをする方法もあります。慎重に写真の端の方からゆっくり汚れを落としていきます。綿棒を利用すると人物の周辺なども精細にクリーニングすることができます。損傷部分に指紋が付くのでゴム製の手袋をして作業すると良いと思います。インク滲みの汚れはエタノールがあると簡単に落とすことができます。
損傷が大きい写真は洗浄を諦めることも選択のひとつになってきます。その場合はカメラで撮影してデータを残しておきます。データがあれば後からプリントすることもできます。
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その他の注意すべき写真
インクジェット/ポラロイド/ラミネートパウチなどは水洗いに不向きです。インクジェットは水濡れで変色し、ポラロイド類は破損箇所より水が入り、内側にカビが生える場合もあります。水洗いする場合はさっと洗ってすぐ水気を切ってください。できれば拭いて落とすのがよいでしょう。
白黒写真はコーティングがないものが多くデリケートです。カラー写真よりも注意が必要です。損傷が大きい場合は水洗いできません。乾拭きで泥やカビを落とす程度に留めてください。
ひび割れていたり粉を吹いている写真は極力いじらない方がよいです。データ撮影をお薦めします。
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アルバムの解体
アルバムを解体し写真を取り出す
濡れた写真をアルバムに入れたままにしておくと、カビやバクテリアの増殖が進むことがあります。乾いたものでも一度水濡れしたアルバムはできれば解体し、写真を取り出すほうがよいと思います。
下記を参照していただましたらと思います。より慎重に写真を守るために一旦カバーフィルムごと外していくというのがポイントです。台紙から写真を剥がす際はカッターナイフを写真と台紙の間に滑り込ませ、こじ開けるような形で外すと外れやすいです。その場合は写真を切らないように注意してください。また怪我しないように細心の注意を払いましょう。
フエルアルバム(接着タイプ)の場合
カッターで写真周囲に切り込みを入れ、カバーフィルムごと写真を取り出します。いきなりカバーを剥がすと、写真の像まで一緒に剥がれてしまうことがあります。カバーごと一旦アルバムから外し、その後に1枚1枚を取り出す要領です。切り込みを入れる際は裏側の写真を切ってしまわないように気をつけます。
ポケットアルバムの場合
ポケットアルバムはカバーの蝶番を外すと簡単に解体することができます。この場合も同様に、写真を引き抜かず、カバーごと写真を外し、その後に写真を取り出します。
裏面に接着糊が付いている場合は先に取り除いておきます。ナイロンたわしなどで擦ると糊を落とすことができます。カバーフィルムを剥がす際は、劣化の少ない側から剥がすとよいと思います。人が写っている場合は顔とは反対の方向など、影響の少ない方角から剥がしてゆきます。人物に劣化が掛かっている場合は慎重に。場合により剥がすことを断念する必要も出てきます。
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フイルムの処置
水に濡れたフイルムは、裏側の乳剤の塗ってある部分が浸食され、画が消えてゆきます。樹脂製のスリーブに入っていますので、水が抜けず、とりわけ面積が狭いので浸食が早く進みます。できるだけ早くスリーブから出し乾かすことが大切です。引き抜けなくなっているので、ハサミやカッターでスリーブを切ってフイルムを出し、そして乾かします。ある程度乾いたら軽く水で洗い溶けた部分を拭います。デリケートなので洗わない方がよい場合も多いです。その場合はウェットティッシュや綿棒などで汚れを拭います。やりすぎると画がどんどん消えてゆきます。ある程度で止めておく方がよいです。フイルムそのものよりも写真像とデータを残すことを念頭に。消えてしまったコマは諦め、画が残っているコマを救い出します。多少ベタ付きが残っていても構わないと思います。洗浄後のフィルムはよく乾かし、紙に巻き保管します。クッキングシートがあれば貼り付かなくてとてもよいです。樹脂製のフィルムスリーブに入れると貼り付いて抜けなくなる場合もあります。処置法はネガ・ポジともに変わりません。
救出できたフイルムはフィルムスキャナーでデータ化します。被災フイルムを写真屋さんへ持ち込んでも現像を断られる場合がほとんどです。像を残すにはデータ化が一番良いと思います。洗浄もそれを念頭に洗います。多少ベタベタが残っていても、データとして残ればフイルム内の写真像は救うことができます。
フイルムスキャナーには様々な種類があり、CMOSタイプのスキャナーは1万円以下で購入できるものもあります。概ね8,000円〜20,000円くらい。高性能のCCDタイプはもう少し高額です。フラットベットスキャナーにフィルムスキャン機能が付いているものもあります。購入は落ち着いてからということで良いと思います。
amazonフィルムスキャナー
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卒業アルバム等 印刷物の保護
水濡れした卒業アルバムなど。印刷物は貼り付きやすいのでより注意が必要です。ページが貼り付く前に処置する必要があります。
塗工紙(コート紙/アート紙)に印刷されたものについて。下記東京都立図書館さんの動画に詳しく処置法が紹介されます。濡れた状態を保つこと。乾くとくっついてしまうことなど。写真の初期処置と真逆なことも多いです。貼り付かないように濡れたまま時間稼ぎすることなど。詳細に対処法が紹介されますのでご覧ください。
被災・水濡れ資料の救済マニュアル
東京都・東京都立中央図書館さん YouTubeより ©東京都
ご家庭内でできることに絞ると吸水紙による乾燥が良い対処法だと思います。長いこと濡れているとカビが生えてきますし、そのまま乾かすとページが貼り付いてしまいます。早期に対処する必要があります。すぐ対処できない場合は、冷凍や脱酸素の処置が必要になってきます。紙を挟んで吸水乾燥させてください。過去の経験では、多くの卒業アルバムがカビてしまい、なお貼り付いてしまいました。
ある程度乾いた後で圧力を加えるとゴワゴワになることも防げます。板に挟んで漬け物石など乗せておきます。動画の13分以降を参照してください。
一般書籍の場合(小説本など)は以下も参考にしてみてください。
水にぬれた資料を乾燥させる
http://ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation/manual_drying.html
国立国会図書館さんより
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写真がくっついてしまった場合
重ねて保存していた写真がそのまま乾くと、写真同士がくっついてしまうことがあります。そのような写真でも大方剥がすことはできます。
浸食が軽い場合は、固まりを水に浸けて端から少しずつ剥がしてゆきます。可能であればお湯を加えてぬるま湯にしてください。ゼラチン質が軟化してよりはがれ易くなります。数枚の固まりごと隙間に水を入れていくような要領で少しずつ分離します。ある程度剥がしたら、さらに1枚1枚を分離します。端の方だけ強くくっつき、真ん中の写真像は無事ということも多いです。やってみてください。
浸食が重い場合は、水に浸けることは避けたほうがよいです。表の絵柄が落ちてしまうためです。水には浸けず剥がしやすい箇所を基点に注意深く剥がしていきます。なかなか簡単には剥がれないと思います。ペインティングナイフで介助を入れたりしながら少しずつ剥がします。状態によっては多少の損壊も伴ってきます。それでも剥がすべきかはよく考えながら行ってください。間に水滴を垂らすと多少は剥がれやすくなります。ティッシュに水を含ませポタポタ落とす感じです。カイロで少し温めるとゼラチン質が軟化します。剥がれにくい場合は試してみてください。
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記した以外にも方策は沢山あります。ここでは主に初期段階の応急処置に限定してまとめました。ご家庭でもできることに絞っています。被災された皆様の写真を救うにあたり、役立つ部分があれば参考にしてください。有用な部分があれば実践してみてください。
(課外のあらいぐま 一同)